民事信託で当事者が死亡したらどうなる? 誰が権利を受け継ぐの?
民事信託とは銀行を通さずに、第三者に財産の管理を依頼する契約です。
主に、認知症の進行を危惧する方や事業を何世代にもわたって承継させたいという方が活用しますが、この契約の当事者が死亡した場合誰が引き継ぐのでしょうか。
ここでは、民事信託で当事者が死亡したときの流れやルールについてご紹介します。
当事者とは
民事信託において、当事者とは次の3人が当てはまります。
委託者:財産の管理を依頼する人
受託者:依頼を受けて財産の管理をする人
受益者:受託者の管理を受けて、財産を受け取る人
民事信託はそれぞれ、異なる場合もあれば、兼任されているケースもあります。
委託者と受益者が異なることを「他益信託」、委託者と受益者が同じ場合を「自益信託」、委託者と受託者が同じ場合を「自己信託」と言います。
また受託者と受益者の兼任も可能ですが、この場合、兼任している状況が1年以上続くと信託が終了されるという決まりがあるため注意が必要です。
当事者が死亡した場合どうなるのか?
では、民事信託において委託者・受託者・受益者のうちの誰かが亡くなった場合、この契約はどうなるのでしょうか。
・事前に当事者が決めてある場合
どの当事者が死亡した場合でも、事前に次の当事者を決めてある場合は、その信託に基づき権利が移行されます。
法律の規定と違う条件を求める場合は信託契約を結ぶ際に、その内容を決めておく必要があります。
・委託者が死亡した場合
委託者が死亡した場合は、相続によってその権利が移行されます。
つまり、相続人が委託者の地位を引き継ぐのです。
ただし、遺言によって信託を行う場合は、相続人に委託者の地位は相続されません。
・受託者が死亡した場合
受託者が死亡した場合、民事信託を作成した時に特別指定をしていなければ、新たな受託者を選ばなくてはいけません。
受託者を定めるときは、委託者と受益者の合意が必要です。
受託者が死亡してから1年の間に新たな受託者が決まらない場合、信託は強制的に終了するため注意が必要です。
また、受託者の相続人は受託者の地位を引き継ぐことはできませんが、新たな受託者が決まるまで財産の管理をしなければいけません。
・受益者が死亡した場合
受益者が死亡した場合は、受益者の相続人が新たな受益者となります。
これは委託者と同じように相続によって、受益権が移行するためです。
通常の遺産分割と同じように、遺産分割協議で取得者を決めたり、受益者が遺言で相続人を指定したりすることができます。
民事信託において、当事者が亡くなり新たな当事者を決めなければならない場合、他の当事者の合意が必要です。
この合意が得られない場合、信託が終了する恐れがあります。
誰が先に亡くなってしまうかは誰にも分かりませんから、予め多数のケースを考えておき、どんな状況でも自分の希望が通る信託契約を結ぶことが大切です。